アメリカに留学していた頃のクラスメイトから、突然、メールが届きました。おそらく、10年ぶりくらいです。いまは、オーストラリアの大学で教えているそうです。当時は、一緒に“宿題”をやったりしていたわけですが、いまではお互いに教える立場になりました。ちょうど、部屋を片づけていたら、大雪が降った日の翌日に撮った写真が出てきて、あの頃を懐かしく思っていたところでした。

ふと、「異文化コミュニケーション」の授業のことを思い出しました。あるとき、「異文化コミュニケーションにとって重要なのはなにか?」と教授が質問しました。少人数の大学院のクラスなので、正解を問うというよりは、ディスカッションのきっかけとして投げかけたのです。「言語能力」「多様性を受け入れる許容度」「ものごとを相対化して理解すること」「情報処理能力」「適応力」などなど、いろいろな“こたえ”が出されました。たしかにそうだな…と思っていたところ、先生はニコニコしながら「チャームだ」と言いました。クラスのみんなが挙げていた“こたえ”にくらべると、とてもあいまいで、なんだか拍子抜けしました。でも同時に、「チャーム」ということばが出たことで、安心した気分になったのをよく覚えています。コミュニケーションを(専門的に)調査・研究しようというぼくたちにとって、「チャーム」というのはあまりにも漠然としていて、でも、それでいて、頷くしかないような“こたえ”でした。たしかに「チャーム」があれば、ことばの壁などすんなりと越えられるように思います。そう、そこに〈居る〉だけでいいのです。

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【1993年3月15日:アメリカで】

日曜日の朝は、必ずと言っていいほど観ていた『兼高かおる・世界の旅』(※おそらくある年代以上のひとしかわからないと思います…)が頭に浮かびます。彼女のように、気取らず、優しく、大らかで、強い…そんな「チャーム」があれば、ことばはもはや必要ないのかもしれません。コミュニケーションを研究すること自体も、あの朗らかな笑いのなかに消えてしまいそうです。

アメリカ東海岸のちいさな町に降る雪は、とてもサラサラとしていました。大雪でクルマが埋まってしまうと、20分ほどの道のりを、キャンパスまで歩きました。寝ているあいだに雪が降って、朝になって外を眺めたときに真っ白な世界が拡がっていると、ワクワクします。だれかが踏みしめたところを歩くのは、それはそれで面白いし(足の大きさとか歩幅をくらべたりして)、安心して踏み出すことができます。でもぼくは、やっぱり、まだ足あとのない、まぶしく光る地面を踏みながら歩くのが好きです。

(いよいよ2週間後にせまった金沢での調査。雪が降ればいいな…などと考えたりして。あ、でも調査中に降られると大変なことになるので、朝起きたらうっすら積もっている、という感じで。)

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