さて、3月は出張やイベントがたくさんあって、なかなかきちんと書く時間がありませんでした。ご承知のとおり、この時期は、報告書や申請書の類を書いたり、納会とか送別会のような集まりに呼ばれたり…。そうしているうちに、桜の開花宣言となりました。新年度をむかえる前に、少しずつキャッチアップしましょう。まずは、iCTLT 2010から。

3月3日 (水) 〜5日 (金) にかけて、iCTLT 2010 (International Conference on Teaching and Learning with Technology) という学会に参加するため、シンガポールに行ってきました。シンガポールのMinistry of Educationに勤める知人に紹介されて、発表の申し込みをしました。参加は初めて。かなり大きな規模で開催されていて、現場の“教員”が多いという印象でした。それを反映して、プレゼンテーションは実践の報告が多く(というより大部分が教育実践、事例紹介だったと思います)、とても面白かったです。たとえばポッドキャストのコンテンツをつくらせる、ブログで学期中ジャーナルを書かせる、GPSをつかった地理教育のプログラムをつくる、などなど。“フィールドワーク+Web2.0”という言いかたをしているプロジェクトもあって、「キャンプ」を考えているじぶんとしては、なかなか刺激的でした。もちろん(やはり?)、twitterを導入した授業の試みも、演題としてプログラムに記載されていました。実際には、発表者の都合で急遽キャンセルとなり、twitterの文字に惹かれて会場にやって来た(と思われる)人たちの落胆ぶりが、ちょっと愉快でした。それだけ、twitterの教育的な利用可能性については関心が高いということなのでしょう。

IMG_0791.JPG

ひとつひとつを見れば、じつは、どれも、それほどめずらしい試みではありません。ぼくたちの周りでも、似たような試みについて、すでに耳にしています。ただ重要なことは、紹介されていた試みの大部分が、中学生〜高校生向けの授業の取り組みだという点です。テクノロジーを前提とした教育のあり方を模索する。それが、教育に関わる教員やスタッフ間でかなり明確に共有されている、そんな感じがしました。国を挙げて、「スマート・シンガポール」(科学技術立国)への戦略を謳うだけあって、教育分野でのテクノロジーのあり方を、徹底的にみんなで考えている、そのパワーが伝わってきました。(やや過剰気味な)デジタル礼賛のストーリーが多いようにも思えますが、“実験する精神”に溢れ、いろいろな試みが展開されているようです。ふだん、自分が相手にしているのは、大学生ですが、いまのアジア諸国の中学〜高校生がどのように教育を受けているのかを見ておくことは、とても大切なことだと言えるでしょう。

ぼくは、昨年9月に実施した家島でのフィールドワーク(キャンプ)について報告しました。日本ではほとんど知られていない学会なのか、プログラムを見たかぎりでは、日本人の発表者はぼく一人だけでした。そのおかげで、futureGOVというウェブマガジン(でいいのでしょうか)から取材を受けました。

・"Japanese uni embraces mobile learning" futurGOV (March 9, 2010)
・Kato, F. (2010) "Camp" as an alternative mode of learning: A case of Ieshima workshop, Japan. slideshare: http://www.slideshare.net/ganmo/ictlt2010-kato-f-3404137

気温12℃くらいの東京から、いきなり30℃のシンガポールへ。そして、ふたたび東京へ。慌ただしく過ごしましたが、とてもいい旅でした。

3月11日に実施した「向島キャンプ」の、その後の展開です。S中さんをはじめ、墨東のかたがたのご厚意で、あの日つくられたポスターが、まちで展示されることになりました。しかも、「巡回展」です。
昨晩は、「キャンプ」の作業場として使わせていただいた「東向島珈琲店」に行き、パネルを貼りました。全部で10枚あるのですが、ここは壁面スペースの都合で、5枚ずつ、入れ替えます。ただ、5枚でもA1サイズのポスターなので、壁面スペースを埋めることになり、なかなかの存在感でせまってきます。

P3182827.JPG
【3月18日の夜:設営完了@東向島珈琲店】

【墨東に暮らす人びとのポスター展】
(1) 2010年3月18日(木)〜31日(水) 東向島珈琲店(東京都墨田区東向島1-34-7)http://www.cfc101.com/higamuko/
(2)2010年4月17日(土)〜25日(日) チクタク商店(東京都墨田区向島5-50-3)http://tictac5503.exblog.jp/
(3)企画あり(O部先生によると、もう一か所ありそう…。)

以下は、「ポスター展」用の説明文です。一部(だいぶ)「釜石フィールドワーク」の説明文を流用していますが…。また、「向島キャンプ」の参加メンバーが書いた、感想やコメントもファイルに綴じて、店内に置いてあります。併せてご覧ください。
ここに展示されているポスターは、ぼくたちが標榜する「キャンプ」という活動のなかで制作されました。すべて、半日で完成させたものです。「キャンプ」は、地域づくりやまちづくりと密接に関わっていますが、なかでも一番の特徴は、コミュニケーションという観点からアプローチするという点でしょう。つまり、まずは、まちを見るのではなく、人に会いに行く…。
3月11日、ペア(もしくは3人グループ)で、墨東エリアに暮らす人びとを訪ねて、仕事の現場を観察したり、話を聞いたりしました。わずかな時間ではありますが、一人ひとりのことばに、そして佇まいに、向島というまちの過去、現在、未来を読み取る試みです。
午後からは、「東向島珈琲店」の机にコンピューターを並べて、編集作業のはじまりです。それぞれのグループは、午後5時までに、ポスターを完成させるという課題に向き合います。レイアウトや画像加工といった問題から、メンバーとのコミュニケーション、時間のマネジメントなど、学生たちには、全体を見通す目線が要求されます。そして、期限が来たとき、ポスターが〈有るか/無いか〉が大きな意味をもつことを、体験的に学ぶのです。
世界に1枚だけのポスターは、人と人との距離を、一気に縮めるはずです。ぼくたちは、プロのデザイナーではありません。だからこそ、ポスターという媒体のもつ力強さを直接的に感じることができるのだと思います。今回の活動でつくられた10枚のポスターは、どれも愛おしく、このまちを映しています。

・向島キャンプ(随時更新中) http://vanotica.net/mukop1/

  • 2010-03-16 23:46:51
  • 3月16日のつぶやき

Powered by twtr2src.



【きょうの東向島珈琲店:2010年3月11日(木)9:15ごろ〜】
きょうは、「向島キャンプ」をおこないました。本部・作業スペースとして使わせていただいた東向島珈琲店は、とても居心地のいい素敵な場所でした。ありがとうございました。経過や成果物については、別途まとめますが、まずは、きょうの朝から晩までの様子をダイジェストでご覧ください。

・向島キャンプ http://vanotica.net/mukop1/ (更新中)



【きょうのデスク:2010年3月9日(火)10:30ごろ〜】
もう3月です。3日〜6日にかけて、iCTLT 2010という学会に参加するため、シンガポールに行ってきました(詳細は別の記事で紹介します)。きょうは、帰国後のいろいろな書類の処理とか、『SFC Review』の校正とか、事務的なことがメインでした。
夕方まで仕事をしてから、都内でのミーティングに出るつもりでしたが、雪が降りはじめたので予定を変更。早めに大学を出ました。(なので、ビデオは短めです。)

100118.jpg

「自分ごと」と「他人ごと」のあいだに、「自分たちごと」があります。それは、マスでもなく、パーソナルでもない、中間の領域です。この、「自分たちごと」ということばをはじめて聞いたのは、2007年の2月、渡辺保史さんにお声がけいただいて、「縮小する都市の未来を語る:コミュニティに根ざした情報デザイン」というセッションに参加したときです。今年はじめにISCAR Asia2010に参加したときにも、杉浦裕樹さんの発表用スライドに書いてありました。渡辺さんに聞いてみたところ、もともとは、「共有のデザインを考える」というトークセッション(2002年5月:仙台メディアテーク)で、参加者のひとりが使ったことばのようです。
…一つは先ほど「自分事」「他人事」というお話がありましたが、僕自身、建築計画に関わる中で最近痛感しているのは、実はその二つの間にもう一つ、「自分たち事」という部分があるのではないかということです。
自分の部屋の中とか、あるいは自分が欲しいものといった個人的なことではなく、たとえば、プロジェクトにいろんな人たちが関わってうまく進んでいく。これは個人の内側にある自分事でも、自分とは全く無関係に切り離された他人事でもない、その中間です。…
「共有のデザインを考える」スタジオ・トークセッション記録 Chapter 1:人が生き生きとする場所のデザイン(p. 22-23)より
そして、「自分たち事」ということばが、とてもいい表現なので、みんなで使い始めた…とのこと。これは、ぼくたちが標榜する「キャンプ」の考え方を深めてゆく上でも、示唆に富んだコンセプトです。とくに、フィールドワーク先で制作するビデオクリップやポスターなど、“ちいさなメディア”と呼んでいるものは、マスメディアでも、パーソナルメディアでもない存在です。それは、特定少数の人びとを結びつける(さらに、その関係を維持する)ためにデザインされます。

いっぽう、最近、マーケティング的な観点から、注目されているのは「自分ごと」です。『「自分ごと」だと人は動く』(2009, ダイヤモンド社)という本のタイトルに象徴されるように、人は、何らかの形で当事者意識が刺激されたとき、具体的な行動へと駆り立てられることが多いようです。とくに、情報過多と呼ばれる時代においては、一人ひとりが、上手に情報を取捨選択する術を身につけています。そのなかで、“スルー”せずに敏感に反応するのは、「自分」に関係が深い内容なのかもしれません。どうやって、人びとにとっての「自分ごと」を理解し、メッセージを送るかがマーケティング的な課題になるはずです。その意味で、ぼくたちをとりまく情報環境の変化や、コミュニケーション行動を理解する上で、「自分ごと」という視点は大切です。

しかしながら、ぼくたちの仕事はマーケティングでありません。もちろん、調査・研究をすすめていく上では、読者を想定します。何らかの社会的貢献を目指す場合には、誰に成果を届けたいのかをはっきりさせておく必要があります。でも、それを(狭い意味での)“マーケット”としてとらえることが、ふさわしいかどうか。そろそろ、再考する時期が来ているように感じるのです。
20年ほど前、大学は、学生(新入生)を「顧客」に見立てて、カリキュラムや大学の役割の再定義を試みました。学生が「客」なら、大学は最良の「サービス」を提供し、「顧客満足度」を高めなければならない。これからは、学生一人ひとりの「自分事」を刺激するための講義や演習を提供しよう、ということになるのでしょうか。科目数を増やし、自由度を高めることは、「自分ごと」に向き合っていくためのカリキュラムづくりのように見えます。それでいいのか…。

大学とは? という大きなテーマにつながるので、そう簡単に整理することはできません。一人ひとりの能力や可能性を高めるという意味では、大学は、学生の「自分ごと」に応える準備をしておかなければならないでしょう。ただ、個人的には、「自分事」ばかりでなく、「自分たちごと」についてきちんと考えてみたいと思います。ぼくたちは、ひとり(自分だけ)ではなく、関係性のなかに生きているからです。大学は、「自分たちごと」に向き合い、関与者としての自分のあり方について模索する〈場〉なのではないか。ここ数年の「キャンプ」という実践をつうじて、その確信は強くなりました。少なくとも、従来型のマーケティング的なメタファーでは語り得ないような、「何か」を考えていく必要があると思います。

ぼくたちの関係性に目を向けるとき、誰かと共に居ること、何かに居合わせることの価値が際立ちます。それは、まさに「共有のデザイン」なのであり、「自分たちごと」について自覚的になるということなのでしょう。

(♪さあ冒険だ - 矢野顕子)



【きょうのデスク:2010年2月18日(木)11:45ごろ〜】
先日届いたGardenWatchCamで撮ってみました。インターバルは1分に設定。自動的にAVIファイルがつくられます。
途中、ミーティングがあったので、しばらく席を離れていて、その間に暗くなりました。



渋谷・109の前は、こんな感じでした(昨日の昼ごろ撮影)。ゆっくり見る時間がなかったのですが、パルコ前あたりにも、たくさんエアタグが浮かんでいるようです。
http://www.web-across.com/todays/cnsa9a000004qxa7.html


ぼくたちがすすめている「フィールドワーク」(考現学・路上観察・タウンウォッチング)的な観点からは、とくにパルコ前が愉しそうです。
具体的には、iPhone上で動作するARのソフトウエア、セカイカメラをプラットフォームに、今年30年目となる定点観測のストリートファッションの写真をはじめ、過去の渋谷の風景の写真等のコンテンツをアップロード。つまり、渋谷パルコを中心に、公園通りやセンター街、神南などの「AR空間」に、既に約200点のストリートファッションのアーカイブが誕生しているのである。
アクロスが、30年間も定点観測を続けてきたというのは、それだけでも素晴らしいことですが、たとえば公園通りのパルコ前に立って、カメラ越しに昔の風景を見るという体験は、なかなか面白いはずです。このアーカイブの中心である若者のファッション(ストリート・ファッション)を、背後に写っている建物やまち並みとともに、いまの状況に重ねて見ることができれば、とてもシンプルな“タイムトラベル”になります。明日の午後、行ってみます。

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 | 67 | 68 | 69 | 70 | 71
--> 加藤文俊研究室
<< January 2020 >>
SunMonTueWedThuFriSat
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031
検索
最近のエントリー
nakanohito