加藤文俊研究室の主要なテーマは、人びとにとって「居心地のいい場所(グッドプレイス)」とは何かを考えることです。ぼくたちが、絶え間なくコミュニケーションのなかに「いる」存在だということをふまえると、「場所」の問題は、コミュニケーションを理解することからはじまります。
 
2016年度は、「いけずなまち」というテーマで、「ランドマークタワー」(横浜市西区)を中心に半径500メートル圏内のフィールドワークをすすめています。ここでいう「いけずなまち」は、まちに偏在する、さまざまな不便や不具合を指すことばとして用いています。たとえば、ぼくたちは、一歩外に出るだけで、絶え間なく禁止や警告のメッセージを送り続けてくるカラーコーン、標識、立て看板の類いに出会います。美観の問題はもちろんのこと、なにより、あれこれとうるさく言われているようで、窮屈に感じられることさえあります。「いけず」は、もっとわかりづらい形で、ぼくたちをとりまく環境にさりげなく埋め込まれている場合も少なくないでしょう。設計者の意図やメッセージに反して、ぼくたちは、じぶんたちの行動が制約されていると感じたり、融通の利かない造作だと評価したりするのです。
同時に、「いけず」は、不便や不具合を強要しながらも、どこか憎めないような、ある種の親しみやすさを感じさせることばです。おそらく、「いけず」であっても、許容できる場合もあるはずです。まちへの想いを支えに、ぼくたちの知恵と工夫を動員すれば、「いけず」とうまくつき合ってゆくこともできると考えながら、フィールドワークをすすめています。

 
Our project aims to explore the ways in which various “good places” are shaped and reshaped through our communication processes. Acknowledging that we are always "in-communication," our research begins with a series of critical observations of our day-to-day activities, with a particular focus on the social life of small urban spaces. Currently, we are conducting a field research to identify various “unpleasant designs,” embedded elsewhere within our neighborhood. Through that process, we hope to initiate our “street fight,” as a mode of active engagement, for the betterment of local communities.