プロフィール

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〈観察者〉から〈関与者〉へ

何が起きるかわからない…。ぼくたちは、変化に満ちた時代に暮らしています。
たとえば、じぶんの身近な生活空間について考えてみると、まちや地域をめぐる、暗い話題は絶えません。実際に、“シャッター通り”と呼ばれるような商店街は、閑散としていて、寂しい気分になります。何らかの方策を求める声が、聞こえてくるのも確かです。しかしながら、ここ5年ほど、みんなで全国各地を巡っていて、あらためて気づいたのは、そのような不安(あるいは不満)、問題に向き合いながらも、明るくてエネルギッシュな人びとが、確実にいるということです。そこに、“何があっても、どうにかなる”という、人びとの強さを感じます。また、諸々の問題を抱えながらも、ぼくたちを笑顔で迎えてくれる優しさにも出会います。それが、リアルです。

この圧倒的なパワーを持って、目の前に現れるリアリティに、どう応えるか。それはまさにコミュニケーションに関わる課題であり、ぼくたちが「場のチカラプロジェクト」として考えてゆくべきテーマです。お決まりの調査研究のスキームに即して、「報告書」を書いているだけでは、ダメなのです。つぶさな観察と、厳密な記録、さらには人びととの関わりをもふくめたかたちで、学問という実践をデザインすることに意味があるのです。

加藤研究室では、〈コミュニケーション〉という観点から「場」というコンセプトについて考えます。地域コミュニティのなかで、創造性に富み、活気のある「グッド・プレイス(good place)」はどのように生まれ、育まれてゆくのか…。まずは、じぶんの足で歩くことからはじめます。五感を駆使してまちをじっくりと眺め、気になった〈モノ・コト〉をていねいに「採集」することを大切にします。それは、つまるところ、ひととの関係性を理解することであり、じぶん自身と向き合うことでもあります。ケータイをはじめとするさまざまなモバイルメディアは、センサー(観測装置)の集まりなので、ぼくたちの身体感覚を拡張させる「装備(gear)」として携行し、フィールドでの体験を記録します。

「場」は、たんなる物理的な環境ではなく、人と人との相互作用が前提となって生まれます。つまり、上述のとおり、「場」は、コミュニケーションのための空間・時間の整備として、アプローチする必要があります。さらに、人びとが「状況(situation)」をどう理解するかは、個人的な問題であると同時に、社会的な関係の理解、環境との相互作用の所産として理解されるべきものです。関わる人びとの数によって、「場」の性質は変わるはずです。単発的に生まれ、一度限りで消失する「場」もあれば、定期的・継続的に構成され維持されていく「場」もあります。

こうした人びとの暮らしや生活を理解するための「しかた」(調査・学習・表現に関わるさまざまな考え方・道具・実践)をデザインし、実際にフィールドに出かけて、その有用性を試すこと、意味づけをおこなうことが、中心的な活動になります。

ここ数年は、柴又(東京都, 2004)、金沢(石川県, 2005)、坂出(香川県, 2006)、“湘南”(神奈川県, 2007)、函館(北海道, 2007)、宇宿(鹿児島県, 2008)、佐原(千葉県, 2008)、豊橋(愛知県, 2008)、小諸(長野県, 2009)、家島(兵庫県, 2009)、釜石(岩手県, 2009)、高崎(群馬県, 2010)、桑名(三重県, 2010)、首里(沖縄県, 2010)等でフィールド調査をおこないました。フィールドワークをつうじて、地域コミュニティに偏在する多様な「グッドプレイス(good place)」をさがし、その成果は、ポスター、ポストカード、まち歩きの音声ガイド(ポッドキャスト)、電車の中吊り広告、ゲーム、CM映像などのフォーマットでまとめ、地域での配布・流通の仕組みを考案します。絶えず蓄積されてゆく「生活記録」を編纂することによって、コミュニケーションのデザインについて考えています。この一連のフィールドワークは「リサーチ・キャラバン」LinkIconとして、展開していきます。

  • 期待される成果: コミュニケーション過程の調査研究、まちづくりゲームの開発、生活者の行動調査(エスノグラフィー)、あたらしい地域メディアのデザイン、コミュニティ・マネジメント、教材開発/ワークショップのデザインと運営
  • キーワード: コミュニケーション;コミュニティ;生活者調査;フィールドワーク;定性的調査法

学位

  • Ph.D.(Communication, ラトガース大学, 2003)
  • M.A.(Communication, ペンシルヴァニア大学, 1991)
  • 経済学修士(経済政策専攻, 慶應義塾大学, 1988)

学歴

  • 慶應義塾大学経済学部卒業
  • 慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了
  • ペンシルヴァニア大学・アンネンバーグコミュニケーション研究所(Annenberg School for Communication), M.A. プログラム修了
  • ラトガース大学大学院・コミュニケーション研究科(SCILS, School of Communication, Information, and Library Studies), Ph. D. 課程修了

職歴

  • 慶應義塾大学・環境情報学部 教授(2010年4月〜)
  • パロアルト研究所(PARC) 訪問研究員(2006年7月〜2006年9月:2006年度春学期「特別研究期間」)
  • 慶應義塾大学・環境情報学部 准教授(2007年4月〜2010年3月)
  • 慶應義塾大学大学院 政策メディア研究科委員(2002年4月〜)
  • 慶應義塾大学・環境情報学部 助教授(2001年4月〜2007年3月)
  • 龍谷大学・国際文化学部 非常勤講師(2001年4月〜2003年3月)
  • 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 非常勤講師(2000年4月〜2001年3月)
  • 龍谷大学・国際文化学部 助教授(2000年4月〜2001年3月)
  • 龍谷大学・国際文化学部 講師(1997年4月〜2000年3月)
  • 慶應義塾大学・環境情報学部 助手(1993年9月〜1997年3月)

学外における活動

  • アーク都市塾:プログラムファシリテーターコース コース指導(第31期 2003年10月〜2004年3月)
  • アーク都市塾:プログラムファシリテーターコース コース指導(第30期 2003年5月〜9月)
  • アーク都市塾:プログラムファシリテーターコース コース指導(第29期 2002年10月〜2003年3月)
  • アーク都市塾:プログラムファシリテーターコース コース指導(第28期 2002年5月〜9月)
  • 第34回国際シミュレーション&ゲーミング学会大会(ISAGA2003) 組織委員会委員、事務局長、総務部会長
  • 情報通信学会 評議員(2008年7月〜)
  • 情報通信学会 評議員(2006年7月〜2008年6月)
  • 日本シミュレーション&ゲーミング学会 理事(第10期 2007年4月〜)
  • 日本シミュレーション&ゲーミング学会 副会長(運営委員長)、理事(第9期 2005年4月〜2007年3月)
  • 日本シミュレーション&ゲーミング学会 副会長(学術委員長)、理事(第8期 2003年4月〜2005年3月)
  • 日本シミュレーション&ゲーミング学会 副会長(運営委員長、ISAGA2003事務局長)、理事(第7期 2001年4月〜2003年3月)
  • 日本シミュレーション&ゲーミング学会 副会長(運営委員長、ニューズレター編集委員長、事務局長)、理事(第6期 1999年4月〜2001年3月)
  • 京都府IT推進専門家会議 委員(2001年6月〜9月)
  • (社)私立大学情報教育協会、教育情報化フォーラム運営委員(2002年4月〜2004年3月)
  • (社)私立大学情報教育協会、教育情報化フォーラム運営委員(2000年4月〜2002年3月)
  • (社)私立大学情報教育協会、情報教育問題フォーラム運営委員(1998年4月〜2000年3月)
  • 岐阜県地方自治大学校・「若手地域プランナー育成講座」 講師(1998年5月〜1999年2月)
  • 岐阜県地方自治大学校・「若手地域プランナー育成講座」 講師(1997年5月〜1998年2月)