フィールドワークに出かけて、素朴な定点観測をおこなうだけでも、まちが時間とともにうつろうものだということを再認識させられます。季節や時候の変化はもちろんのこと、ぼくたちの日常生活が、想像している以上に規則的にくり返されていることにも気づくはずです。つまり、「いけずなまち」は、つねに観察可能なわけではなく、あるタイミングで目の前に現れるのです。また、ぼくたちが、まちなかで〈モノ・コト〉と「居合わせる」状況は、偶然ばかりではなく、さまざまなコミュニケーションや調整の所産として実現していることも少なくありません。
 
One of the important approaches for our fieldwork is to visit the research site repeatedly. Ideas from “time-geography” may contribute to shape and reshape our attempts to understand temporal changes of small urban spaces. A series of observations suggest that our understandings of the vicinity is closely bound by time. Also, situations within which we are embedded can be understood as products of our perpetual contacts and communication processes.

時間地理学的な想像力
ぼくたちのコミュニケーションや社会関係は、一人ひとりの行動軌跡の一部を、誰かと共有することによって成り立っています。左図は、架空のA・B両氏が学会に出かけたときの行動軌跡を描いたものです。A氏は、懇親会のあとで居酒屋で一杯飲んでからホテルAに行き、翌朝「会場2」を目指します。B氏は、懇親会でA氏と別れてからホテルBに直行し、翌朝は早起きしてカフェに寄ってから「会場2」に向かいます。両氏は、懇親会や研究報告会という学会のプログラム上では、2日にわたって同じ場所(会場)に居合わせているものの、その〈あいだ〉の時間については、お互いがどのように過ごしているかを知らずにいます。 それぞれの起点から、会場を目指して人びとが移動し、決められた時間に集合するという状況は、事も無げに実現しているように見えますが、じつは、参加者たちが各自の「方針」にもとづいて、適切な行動軌跡を描くことが前提となっています。つまり、〈あいだ〉の過ごし方をもふくめ、参加者たちによる「協調作業」によってプログラム実現しているのです。
出典:参加者の足どり(日本生活学会 ワークショップシリーズ 002, 2016)