いけずなまち|いじわるな道しるべ(井上涼・佐藤成実・武市陽子・家洞李沙, 2016)

もうひとつ重要なのは、調査者の位置にかかわる問題です。たとえば、今回のフィールドワークの範囲を定める起点となった「ランドマークタワー」は、そもそも「目印・道標」としての役割を果たしているのか。いまではいくつもの高層ビルに囲まれているので、ぼくたちが歩くと、「ランドマーク」は見え隠れします。だから、どこにいても見えるはずの「目印・道標」との関係は、少し面倒です。

〈見える=見えない〉は、「いけず」にかかわる問題として位置づけることができます。これは、調査対象の〈モノ・コト〉が、調査者との関係(向きや距離)に応じて、解釈や意味づけの多様性をもたらすことを示唆しています。

Our position matters. Things and events become observable, for the first time, through our movement within the field under study. The Landmark Tower, for instance, may be captured in a variety of styles and postures as we walk around the city. And thus the very notion of “unpleasant design” is understood in relation to the ways in which we orient ourselves to the things and events. Occasionally, their presence is unavailable.

ランドマークタワーをさがせ(仮)
 
   

春学期の「いじわるな道しるべ」の問題意識をふまえて、みなとみらい界隈のフィールドワークを続けています。急に見えなくなったり、ビルのあいだからわずかに見えたり。「いけず」な道標に戸惑いながらも、少しずつ、「ランドマークタワー」に不思議な愛着をいだくようになります。それは、フィールドワークをとおして、ぼくたちの身体感覚が変わりうることの表れです。
(阿部梨華子・磯野知愛・國吉萌乃・菅原千夏・坪倉仁菜, 2016)